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【エッセイ】長期優良住宅におけるジレンマ

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新築住宅に引越して、しばらくすると市町村から家屋調査の連絡があります。これは、住宅の固定資産税を決定するためのもので、規模や構造、さらには付帯設備なども調査対象とされています。なお、固定資産税は、毎年1月1日時点での住宅所有者に課税されるもので、一般的には木造<鉄骨<RCと評価額が高くなり税額も高くなります。

家屋の評価額は3年ごとに見直すとされていますが、これは個別にメンテナンス状況や劣化状況などを調査して見直すと言うことではなく、先の家屋調査時の再建築価格を評点数で表わしたものに経年による減点補正率を反映させ、物価水準を考慮して評価替えを行うと言うものです。つまり、評価替えの基本は経過年数と物価水準の増減であり、長期優良住宅に課せられた定期点検や、任意のリフォームに対する評価は含まれていないのです。

直近の見直しは、平成27年度に評価替えが行われており、前回の評価替え年度(平成24年度)の再建築価格に建築物価の変動割合を乗じて算出されています。なお計算の結果、評価額が平成26年度の評価額(平成24年度の評価替え価格に経年の減点補正を行ったもの)を上回る場合には、原則として平成26年度の評価額に据え置かれています。

家屋の固定資産税における経年減点補正率は、0.8(経過年数1年)から始まり最後は0.2まで下がります。つまり、どんなに古くても固定資産税がなくなることはありません。また、この0.2に至るまでの年数には、再建築時の評点数区分により異なっており、延床面積の1.0m2当たりの評価点数が5000点未満の15年、50000点〜79000点未満で20年、79000点〜121000点未満で25年、さらに121000点以上で35年となっています。標準的な住宅では、25年か35年が0.2に至る年数でしょう。

標準的な木造住宅の減点補正率が0.2になるのは25年、評価が高いものでも35年ですから、3世代100年の使用を目指した長期優良住宅のユーザーは複雑な気持ちになるのではないでしょうか。この評価が中古市場での評価額とするなら、長期優良住宅を建てたユーザーは疑問を持つかもしれません。

固定資産税が安くなることには、恐らく抵抗はないでしょう。しかし、あえて費用を掛け、定期点検にも時間やコストを掛けた長期優良住宅が、僅か35年で中古市場での評価が新築時の2割になってしまうことには大きな抵抗があるのではないでしょうか。この長期優良住宅のジレンマを国、そして市場はどのように解決していくのだろうか。

一方で、基本性能の高い長期優良住宅の市場価格が35年でミニマムになるとすれば、良質で安い中古住宅のストックが増え、住替え・引越しは中古市場だけで賄えることとなり、人口減が拍車をかけ新築市場は急激に衰退してしまうことも推測され、何やら恐ろしい展開になりそうな気がします。

新築住宅の評価は、総務大臣が決めた固定資産評価基準に基いて行われ、評価額は市町村長が決定します。標準では、住宅評価額×1.4%(標準税率)が固定資産税額となりますが、平成30年3月31日までは、延床面積の内の120m2までの部分を1/2の軽減措置が取られています。

この軽減措置期間は、戸建て住宅で新築から3年間、マンションでは5年間となっていますが、長期優良住宅ではそれぞれに5年間、7年間と延長されています。

このような国策で、優良な住宅のストックが増えることに異論はなく、やっと欧米並みの水準に近づいたと言えますが、資産価値としての評価システムも合わせて見直す必要があると思います。住生活基本法では、既存住宅が資産となる新たな住宅循環システム、そしてそのための検査や住宅履歴情報などの総合的なシステムを検討しているようですが、まだ具体的な施策は見えていません。恐らく、市場感覚の方が正常な反応を示し、先行していくのではないかと、期待しています。

質問 Jan 19 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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