建築士ドットコムQ&Aサイトにようこそ。ここではコミュニティメンバーに質問したり、回答を得ることができます。

【コラム】日本庭園にみる造形美

+2 評価

 

 はるか古代より世界中の民族や宗教及び文化の発展により人々の居住空間は発展してきた。居住空間の発展とともに付随する形で後に庭園が姿を表す。ひとくちに庭園と言っても一般的な庭を指すものではなく、鑑賞や宗教の世界観などを表すものについて一考しようと思う。

 世界の庭園といえば中世のヨーロッパの中庭を思い浮かべる方も多いかと思われるが、アジア圏にも数多くの庭園が存在している。ヨーロッパや西アジア圏の特徴として(日本庭園との違い)人工的な池や噴水とそれに水を供給する水路や石畳やタイルなどを敷き並べ、花壇や鉢などに植樹された樹木があり自然美とは違い人工的な美しさを表現している。有名な庭園はそのほとんどが外壁から身を守るため壁に囲われた中庭形式となっていることが多い。この空間に入ってきたときに別次元の空間を感じさせることで現実から離れた精神的抑圧の解放などがなされている。

 世界の七不思議のひとつである「バビロンの空中庭園」などは現在では実在していたのではないかと考えられている。バビロンに建立された宮殿は高さが25mもあり階段状に設えられたテラスに最上段まで水を汲み上げ滝のような様相を持ち木々や花々の廻りを流れ落ちる様はまさに空中に浮いているように見えたという。

 ところは変わり日本の庭園とはどのようなものなのだろうか。日本の庭園の特徴としてはヨーロッパの人工的な感動を呼ぶ形ではなく自然への造形美に憧れ、人の手によっていかに自然を感じさせるのか、そこに水はなくともいかに水や空気を感じさせるのかといったものに非常に重きを置いている。中世の日本では海への憧れが強く、海の情景を模倣し川の清流を求め池を造り自然の造形美を追求した。くどいようだがヨーロッパに比べ非常にシンプルで素直な自然美を求めてきた。

 万葉集の歌人たちが華やかな舞台に立っていた頃にはすでに住まいと庭は切っても切れない関係となっていて歌人の呼んだ句にも「庭」を指す言葉が詠まれている、句の中の宿とはやど(屋外)の意であり住まいというよりも屋外部分、つまり庭を指している。宿が住居を意味するようになったのは古今和歌集の時代からといわれている。

 時代は変わり平安時代になると奈良時代からは趣きも変わり情景豊かな庭園が出現してくる。これは京都が奈良よりも街全体が山々に囲まれ庭園の基礎となる背景があったことからも納得できるし、琵琶湖から流れ出る河川と四周を囲った山と谷、更には石や木々果ては空気までも全てが集約している地域ならではないだろうか。

 大自然に比べれば非常に小さい空間である庭に自然の風景を形づくり模倣することにより中世の日本ではすでに、後世に残る名庭園も誕生している。時は鎌倉に移れば小うるさいしきたりが除々に頭角をあらわし、例えば青竜から白虎の方向へ水を流さない。だとか、自然のまま立っていた岩を寝かせたりなどしてはいけないなど陰陽思想が発展したことによる「禁忌」が多くなっていったようだ。

 禅宗の影響からか室町時代の庭は抽象的な庭造りをするようになり将軍足利は高度の庭造りを命じ建物の寝殿造りと広い庭は「大庭園」と呼ばれ、寺社仏閣の庭は平庭と呼ばれた。後の金閣寺や銀閣寺の庭はこの平庭が源流と呼ばれている。

 このような編纂を経て一本の樹木や水が無くとも観る人に枯山水を思い起こさせ山石や白砂により美麗な感慨を与えている。

 最近の庭は情緒のないものも多いしほとんどは面積の関係で造ることもかなわないかもしれない。しかし、はるか古代から綿々と培われた日本の庭について顧客へしっかりと伝えることにより、より良い住まいを建てる際の一助になれば幸いである。

質問 Oct 9, 2016 公開 提案 事務局 (13,170 ポイント)

ログインまたはユーザー登録してから回答してください。

...