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【エッセイ】住宅循環システムの維持管理と住宅資産価値

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 国の住生活基本計画の中では、良質な住宅のストックについて触れられており、将来世代への住宅循環システムを構築するとあります。このように良質な住宅を数世代に渡って循環させるためには、相応の基本的な耐久性能と維持保全計画が必要となり、適正な点検とメンテナンスが求められます。

 耐久性に関する具体的な内容としては、耐震性能や劣化対策があり、維持保全計画では維持管理や更新対策があります。そして、長期優良住宅の認定基準では、住宅性能表示制度の耐震等級(構造躯体の倒壊等の防止)の等級2以上、劣化対策等級(構造躯体等)の等級3、さらには維持管理対策では等級3と規定されています。そして、これらを少なくとも10年以内毎に定期的な点検を実施するよう明示されています。

 では、長期優良住宅の長期とは何年くらいを想定しているのでしょうか。住宅性能表示制度の劣化対策等級3では、通常の自然条件で維持管理され3世帯まで大規模な改修工事を必要としない、となっています。また、同制度では1世代を概ね25〜30年としていることから、75〜90年となります。一方、長期優良住宅では、100年としていますので3世代以上ということになります。

 長期優良住宅の維持保全の主体者は当該住宅の所有者であり、所有者自身あるいは業務委託契約にもとづいて企業が行う維持保全業務の状況報告書を保管しておかなければなりません。そして、所管行政庁(建築確認申請先)の求めに応じてに報告しなければなりません。また、地震や台風などの災害時にも求めに応じて点検・報告することとあります。なお、優良住宅認定基準には、引き渡し後30年間の定期的な点検や補修計画を盛り込んだ維持保全計画も含まれていますが、それ以降の維持保全計画や災害時の点検・補修は任意となっています。個人的には、この辺が中途半端な感じがします。

 ハウスメーカーなどのアフターサービスは、引渡し後の3ヶ月目、1年目、2年目、5年目、そして10年目などとしているところがあり、その期間設定も色々あります。また、一定期間を無償で行いその後は有償としているところが一般的です。かつては、初期不具合が発生し易い2年までを無償としている企業が大半でしたが、最近では10年の無償サービスが標準となってきており20年まで無償としてきているハウスメーカーもあります。10年・20年となると小規模ビルダーでは益々対応が難しくなるでしょう。余談ですが、ハウスメーカー系やパワービルダー系のリフォーム会社は、上でのべたアフターサービス部門から発展したものが大半です。

 100年間に行う10年毎の点検やリフォームに掛かる費用がどのくらいになるのかは推測の域をでないが、間違いなく、かつての30年・40年で建て替えていたころよりも経済的で資源の有効活用になるでしょう。しかし、例えば長期優良住宅の50年を経過した標準的な住宅にどれくらいの需要があり、資産価値としての市場取引価格に所有者が納得出来るか否かが問題となります。一気に、欧米のようにメンテナンスされた住宅では資産価値が変わらない、あるいは上昇するようになるのは無理かもしれませんが、期待したいところです。

 良質な住宅の循環システムを定着させるためには、この中古市場の価値観やユーザーの意識が変わる必要があります。そして、これらの変化は生活スタイルにも影響を与え、一世代住宅が増え続けている状況に歯止めをかけるような予感がします。また、行政の固定資産税の評価方法も替える必要があります。こうして、考えてみると、良質な住宅の循環システムを軌道に乗せるには、まだまだ沢山の問題がありそうですが、安定と成熟した住環境への過程であるのかもしれません。

質問 Oct 4, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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