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【エッセイ】豊洲市場問題で憂う

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 豊洲市場に関する連日の報道には、何か違和感がある。盛土の有無や地下水の汚染の有無、さらには移転の是非などは、政治色も含んでおり、はっきり言ってよく判らない。マスコミの報道の仕方は、どこそこに何センチの水がたまっていたとスケールを差し込んで見せたり、ペーハー値がいくらであった、さらには有害物質がいくらだったとか、視聴者に負のイメージを持たせることに熱中し、盛土から地下空間になった経緯の根本的な問題とごちゃまぜにしている。

 専門家会議と称している方々は、提案した内容になっていないことに憤慨し、責任はないと主張。提案だけして後は知らんぷり、と言うのは社会人として無責任であることに気付いていない。都の隠蔽体質うんぬんも報道されているが、外部の者には判断できるものではない。しかし、都の中央卸売場担当者は、提案の内容や意図を理解して外部に基本設計を発注したのか。また、出来上がった基本設計を都の担当者は理解できていたのか、疑問は残る。外部に基本設計を発注する際、あるいは少なくとも出来上がった際に、専門家会議担当者やその他の関係者を含めた合同確認が行われていれば、今回のような問題にはならなかったはず。

 報道画像をみて疑問に思うのは、水が溜まっているのは何故か、どうして土間コンクリートを打たなかったのか、設計時に地下水位の高さを確認しなかったのか、・・・本当に疑問だらけです。

 再結成された専門家会議の判断として、地下空間に溜まっているのは地下水だそうだ。地下のピットに水が溜まりやすい現実はあるが、貯水槽ではないのだから、それで良しとしていいものでは無い。水が溜まった原因とそれに対する対応がどのようになっているのかも、この建物の耐久性に影響があるはず。これらの調査と結果次第では、設計ミスあるいは施工ミスと言われても仕方がないのではないか。

 最近の報道で、専門家会議は2008年7月に盛土を提案。しかし、これを受けた同年12月の技術会議では、「土壌汚染対策法」の改正で浄化作業用に地下空間が必要と判断。一方、11年3月に基本設計を都が発注した際には、地下空間はなかったが、同年6月に完成した基本設計には地下空間が設けられていたと言う。これで何となく、土間コンクリートを打たなかった理由を推測できるが、時間を掛けた割には間が抜けている。いや、時間を掛けすぎたためのミスか。

 つまり、専門家会議が提案した内容では土壌汚染の法改正に対応できないと技術会議で判断し、地下空間を計画したが、2年8ヶ月間後に発注した基本設計の内容は、専門家会議が提案に添ったものだった。そして、その後に法改正対策を思い出したのか、設計変更を依頼して地下空間のある基本設計にしてもらった、と言うストーリーが見えてきます。法改正で地下空間が必要と判断したのは、専門家会議の提案の僅か5ヶ月後です。どうして、その旨を専門家会議に報告や相談をしなかったのか。保身に長けた役所らしくない行動ですが、基本設計の発注時に法改正による地下空間の必要性を判断した結果を伝達していない連絡の悪さと言う点では役所らしい結果です。ある意味では、まぬけな傲慢さが出ているともいえます。

 東京都中央卸売市場の9月27日現在のホームページに、豊洲市場用地の土壌汚染対策工事は完了しました、とある。ここには、万全な土壌汚染対策を説明をした後、専門家会議が土壌汚染対策を提案したとあり、これを受けて技術会議が、評価・検証し、施工可能で高い効果が得られる総合的な土壌汚染対策を提言した、とあります。そして、土壌汚染対策工事は完了したと言う。では一体、今のゴタゴタは何なのか。役所のこの感覚が全く理解できない。この鈍感で無責任な感覚が問題を大きくしている。

 結局のところ、専門家会議、技術会議、東京都中央卸売市場、都の担当建築部門、設計事務所、施工会社、これらが情報の前後を確認せず伝達ゲームを行ってしまったことが原因でしょう。道義的な責任を別にすると、特に誰が悪いわけではなく、システムが悪いのです。そして、このようなシステムにしてしまった都に多大な責任があります。

 なにか、以前に同じようなことがあったな〜と考えていたら、基礎杭が支持層に達していなかったためにマンションが傾いた事件があった。大手デベロッパーの元請が、監理、施工と次々に下請けに渡し、責任の所在が希薄になり不正に気づかなかったこと。さらに、国立競技場のドタバタを思い出した。設計コンペ優勝者に多大な迷惑を掛け、国民の不信をかった上に笑い者にされ、それでも懲りない行政、そして日本、これで大丈夫か?

 建築の世界では、設計担当者が情報伝達の最も重要な位置にあります。発注者の意図をくみ取り設計図書に表わし、施工業者に情報だけでなく意図を伝えなければなりません。また、施工業者からの技術的なアドバイスも真摯に受け取り、理解した上で発注者に伝達し理解を得なければなりません。一方向の伝達ゲームにしてはいけないのです。今回の豊洲市場の問題は、設計や施工側にあるのではなく、発注側にある印象を持ちますが、改めて情報共有の重要性を教えてくれます。

質問 Oct 2, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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