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【エッセイ】住生活基本計画に見る既存ストックと住宅循環システム

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2016年度から2025年度までを期間とする住生活基本計画が3月に閣議決定されました。この中で既存ストックの活用に触れていますが、最終的に求めているストックとは長期優良住宅やZEHなどの良質な住宅で、それ以外の住宅はリフォームや建替えで良質なストックへと更新を図り、将来世代への住宅循環システムを構築することとしています。では、現状の既存住宅ストックはどのような状況なのでしょうか。

【既存ストックの現状:国交省・住生活基本計画(2016年)および住宅産業新聞社記事より一部引用 】
総数6060万戸_5210万戸:居住住宅
| |_ 200万戸:良質な住宅(耐震性+省エネ+バリアフリー)
| |_ 3500万戸:新耐震基準(1981以降):省エネ・バリアフリーのリフォーム対応
| |_ 1500万戸:旧耐震基準(1980以前)
| |_ 600万戸:耐震性有:省エネ・バリアフリーのリフォーム対応
| |_ 900万戸:耐震性無:建替え対応

|___  820万戸:空き家
| |_ 500万戸:賃貸用・売却用、二次的住宅
| |_ 320万戸:その他空き家
| |_ 184万戸:耐震性有(耐震基準不明):省エネ・バリアフリーのリフォーム対応
| |_ 136万戸:耐震性無(耐震基準不明):建替え対応

|___ 30万戸:不明

閣議決定された内容の既存ストック部分をまとめると以上のようになります。これ集計すると、今後良質なストックとするために必要な建替えは、1036万戸となり新築着工戸数が90万戸前後の現状では単純計算で12年以上の期間となりますが、空き家を除くと900万戸で数字上では2025年度には実現可能な数字と思えます。また、耐震性のない住宅は基準法の制約から今後の増加はないと考えられますので、良質なストックへの対策としては、先の建替えと省エネ・バリアフリー等のリフォーム対象数の4100万戸と言うことになります。ただし、2013年の省エネルギー基準は2020年までに新築住宅で義務化するとあるため、それまでの間は建替えにおいても良質な住宅の条件を満たさない更新リフォームが必要なストックが増え続ける可能性があります。

今回の住生活基本計画では、世帯数が2019年の5300万世帯をピークに減少していくと言われていますが、2013年時点で200万戸しかない良質なストックを全世帯数にまで反映させるには長い道のりとなります。特に問題となるのが、マンション・ストック数613万戸(2014年時)で、総住宅ストックの10%以上を占めています。この内、旧耐震基準で建てられた106万戸に大きな懸念を感じます。マンションの建替え実績は累計で1.4万戸(累計年数不明)で、旧耐震基準の106万戸が建替えで良質なストックとなるのは、ほとんど考えられないほどです。区分所有者の合意形成や管理組合員(居住者)の高齢化、なり手不足などから、適正な管理が困難になりつつある現状では、不良ストックとして取り残されていく気がします。

では、不良ストックを別にして仮に十数年後に全世帯が良質な住宅となった時、新築着工戸数はどうなるのでしょう。長期優良住宅の当初の名称は200年住宅としており、メンテナンスの実施程度によりそれよりも短い耐用年数になる可能性はありますが、50年以上はあるでしょう。その場合、十数年後では現時点で良質な住宅もまだ建替え時期には至っていません。当然、新築着工戸数が激減するのは想像でき、民間研究所では2025年には64万戸、2030年には53万戸、2033年には30万戸と予測しているところもあります。恐らく、初期の良質な住宅が建替え時期を迎えるころまで減少が続き、住宅業界ではリフォームが主流となります。そして、良質な住宅の建替えとリフォームがバランスされる頃、良質な住宅循環システムが機能し始める時となるのでしょう。

質問 Aug 20, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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