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【エッセイ】スティールハウスの現状

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スティールハウスとは、ツーバイフォーの住宅枠材を、板厚1.0mm前後の亜鉛めっき鋼板を冷間成形した形鋼に置き換えたもので、アメリカ、オーストラリア、欧州など十数カ国で実用化されており、日本では、1997年に当時の建築基準法の特別認定(38条認定)で建築が可能となりました。

この背景には、阪神淡路大震災(1995年)の仮設住宅に3千戸建設されたことがあります。そして、特別認定を機に鉄鋼6社が、スティールハウスの普及を本格化させる動きとなりました。また、2001年には国交省から技術基準の告示が明示され、薄板軽量形鋼造として建築基準法に正式に位置づけもされています。これらから、2001年には643棟だった着工戸数が2005年には2157棟にまで延び、着実に拡大していくと思われていました。しかし、これ以降スティールハウスの話題を聞くこともなくなり、この数年は影を潜めたように感じていました。では、スティールハウスの現状はどのようになっているのでしょうか。

結論から述べると、スティールハウスの着工棟数は2005年の2157棟をピークに年々減少し、2014年では827棟にまで落ち込んでいます。ただし、着工戸数では2013年に対して2014年は13%増の1545戸となっています。いずれにしても、当初に期待されたほどには延びておらず、かろうじて、集合住宅等で採用されているようです。一時期は、在来木造、ツーバイフォー、そしてスティールハウスが住宅の3本柱になり、飛躍的に延びると思われたスティールハウスも気がつけば、年間1000棟を大きく下回るようになっていたことは驚きです。中型建築物では重量鉄骨造やコンクリート造に阻まれ、小型建築物では、木質系の厚い層に跳ね返されている状況が想像されます。

スティールハウスの構造方法は、薄型軽量形鋼の軸材に構造用合板やMDFなどの面材を張るツーバイフォー工法と同様としていますが、建設する場合は大臣認定の範囲での運用、あるいは戸別に構造計算することとなり、個人住宅などの小規模建築には、その汎用性には欠けています。また、木質に比べて振動減衰性能が極端に小さいことから、床や壁を通過する振動や音に対して相応の対策が必要となります。さらに、直感的には、結露にも不利と思われ、外断熱工法となっているのも理解できます。スティールハウス協会では、耐震性や省エネ、そして居住性などのメリットを挙げていますが、これらはスティールハウス特有のメリットとは言えず、ごく一般的な、どの工法でも謳っているものです。むしろ、挙げているメリットの中にはハンディーを克服して魅力としているものがあり、コストアップになっているのではないかと思えるものもあります。

スティールハウスの着工戸数が拡大していた頃、シロアリ被害がないスティールハウスを沖縄や東南アジアで建てる計画がハウスメーカーにはありました。しかし、その後の展開を耳にしていません。そこで少し調べてみると、ある大手ハウスメーカーが、2015年にインドネシアでスティールハウスの現地法人を設立し、2階建戸建分譲住宅の販売を開始したようです。ただし、スティールハウスの選択がシロアリ対策に有効なためか、流通や施工技術上の問題からなのか、そして何故10年以上を経過してからなのかは不明です。いずれにしても、国内から海外に活路を見出したのかも知れません。日本国内では、1996年からの20年で18200棟ほどを供給したスティールハウスが、今後どのように展開されるのかは予測がつかず、木質系の住宅が定着している日本市場で、敢えてスティールハウスを選択する真のメリットをスティールハウス協会などがもっと積極的に打ち出さない限り、着工棟数・戸数は期待できないのではないかと危惧しています。

質問 Aug 20, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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