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【エッセイ】狭小宅地の家を持つ意味

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バブル時代、当時の住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)で融資を受け、新築住宅を購入する際には、100m2と言う宅地制限がありました。これは都市計画法による「良好な宅地の整備」に基づいたものですが、自治体による開発指導も加わり、地域によっては120m2としているところもありました。当時の都市計画法では、市街化を促進する地域と抑制する地域で区別され、それぞれで宅地制限されていました。その後、地価の高騰などを主な理由にして用途地域別による制限となり、さらには地域特性別による制限へと変わってきました。これに合わせて、住宅金融支援機構での融資条件に宅地制限はなくなりました。

現在でも無秩序なミニ開発は制限されていますが、かつてよりは緩和されたと言えます。そのような状況下で、狭小宅地の分譲住宅を購入する意味とは何でしょうか。例えば、50m2の土地で建蔽率60%、容積率200%とした場合、3階建てとした場合でも最大延床面積は90m2となります。計算上では駐車場も何とか1台は確保できそうですが、庭などは望むべくもなくアプローチを取るのが精一杯でしょう。それでもこのような狭小宅地の分譲住宅が売れていると言います。元々、所有している土地が狭小地である場合は、やむを得ない事情もあるでしょう。優れた設計者に依頼すれば快適な住生活を送ることもできると思います。しかし、敢えて狭小地を購入する必然性に疑問を持つのです。

恐らく、立地条件と価格が購入動機でしょう。立地条件とは交通の便と環境ですが、いずれも住生活の中心ではなく、その土地と住居を取り巻く外部条件のことです。つまり、出かける時の交通の便がいい、近くにスーパーがある、緑が多いなどで、住生活そのものではないのです。これでは本末転倒ではないでしょうか。勿論、それらの外部条件も大事ですが、住生活のスタイルを主体においた別の選択肢があってもいいのではないでしょうか。批判を承知で言えば、延床面積90m2で全面道路側の採光しか期待できない住まいより、120m2の広く明るい居室とバルコニーのあるマンションの方が、遥かに適切な選択だと思います。

くどいが、それでも狭小宅地の分譲住宅は売れています。やはり土地に対する不動産価値に重きを置いているからでしょう。人それぞれの価値観ですから一概には言えませんが、快適な住生活と資産残しの二者択一を迫るところに日本の住宅問題があるように感じます。数十年後の高齢化した時の生活スタイルを考えた時、あるいは売却する時、果たして同じ価値感を持ち続けることが出来るのでしょうか。無用なストックを増やす要因になりはしないか、不安が残ります。勿論、この問題はマンションにも共通します。しかし、その間の生活スタイルに明らかな差があると共に、生活スタイルの変化にも対応しやすいと思います。

住宅性能表示制度や長期優良住宅の促進などで住宅の高品質化と長寿命化は図られていますが、外部環境を含めた住生活の向上に繋がる政策も欲しいところです。各自治体では狭小宅地制限を見直し、制限面積を拡大する動きもありますが、パブリックコメントや市民の意見募集では、購入価格の上昇を理由に反対する意見が多く見られます。

ミニ開発による売りやすい狭小宅地の分譲住宅、それを全否定するものではないが、良好な住生活との不整合を抜本的に解決する方法がないものか。増える住宅ストックと空き家、一方でミニ開発と宅地制限、様々にからむこれらの利害は、もつれた糸をほぐすような時間と努力が必要なのでしょう。そして、土地や住生活にたいする価値観の転換が必要だと感じます。

質問 Jul 5, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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