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【エッセイ】無電柱化を真剣に考えてみる。

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時折、ヨーロッパの街並みや観光地などを紹介しているテレビ番組を見かけることがあります。とりわけ美しい場所を選んでいるとは分かっているものの、やはりその美しさに惹かれてしまいます。そして、そこで気づくのは、電柱や電線がないことです。日本では歴史的な街並みを優先して無電柱化し、街並みの保全や観光客の誘致に努めていますが、多くは無骨な電柱や電線で阻害されているのが実情です。以前、パリを訪れた時、案内してくれたデザイナーが幹線道路から少し入った市街地の古いビル街を指して、自慢気に説明してくれました。確かに、古いながらも、それぞれに特色を出している街並みは美しく、低層のビル街の谷間から見える青空がとても印象的でした。

日本の無電柱化は、先の歴史的街並み以外では、都市部の幹線道路に面したビル街で進んでいますが、一歩奥に入るとビルの谷間を電線が横切り、谷間に見える青空は上下いくつにも分断されています。悔しい限りです。

国交省資料による世界主要都市の無電柱化では、ロンドン、パリ、香港が100%、そして台北とシンガポールの90%代と続き、東京(23区)の7%、大阪市の5%は比較の対象にもならないほどです。

国の無電柱化は1986年(昭和61年)から2008年までに、5期に分けて電線類地中化計画が進められましたが、2009年のガイドラインとなってからは、整備延長距離が減少しています。それだけではなく、2008から2012年の間には27万本の電力電柱が増加しており、無電柱化が衰退しているのです。そして現在では、2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて次期計画を検討中とのことです。そのひとつの現れか、2016年4月1日より、直轄国道(国道の指定区域)での電柱の新設を禁止としました。しかし、既存の電柱については当面は継続とし、地方自治体が管理する道路については各自治体に任せているようです。

無電柱化のメリットには、街並みの美観だけでなく、地震などによる倒壊時の二次災害や緊急車両の通行障害を無くすことがあります。また、歩道や車道脇を占拠している電柱がなくなれば、歩行や通行の安全性も高まります。さらに、地震による電力電線の被害は架空線に比べ地中線の方が1/2と少ないことが阪神淡路大震災時のデーターでは判明しており、その優位性が証明されています。

一方、デメリットは何よりも電線の地中化によるコストが掛かることでしょう。コスト削減として管路の埋設深さの見直しやケーブルの直接埋設、さらには軒下配線などが検討されていますが、コスト負担者である道路管理者や電線管理者の負担が、先の無電柱化の比率が思うように上がらない原因でしょう。また、あまりにも電柱風景に見慣れているため、市民の無電柱化への意識が薄いことにも原因があるかもしれません。

無電柱化は、先に述べたように1986年から進められていますが、国や自治体がその計画や実績を積極的に告知しているかは甚だ疑問で、行政に不言実行は必要ないと思うのは私だけだろうか。もっと告知して、市民に後押しを求めるのも促進の手段だと思うのだが・・・。他方で、国に変わって告知活動をしてくれているNPOがあります。電柱のない街づくりを支援し、セミナーやシンポジウムなどで無電柱化の情報発信をしてくれているようです。ありがたいですね。

無電柱化に際しては、地上機器(トランスなど)の設置に民間地の使用が必要となり、利害問題が発生する可能性もあります。したがって、それを解決するためにも国や自治体はもっと積極的に告知を行い、理解を得ることが重要だと思うのです。日本の街並みを美しくしたい一人として、これからも注視していきたいと考えています。

質問 Jul 3, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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