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【エッセイ】在来木造住宅のプレハブ化

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在来木造住宅と聞くと、現場で大工さんたちが手作りする、と言うイメージが今でもあるかもしれません。ですが、もはや大半はプレハブ化されており、現場で大工さんがカンナを使う姿は見かけなくなりました。

在来木造住宅のプレハブ部品でもっとも知られたところでは、ユニットバスでしょう。それ以外では、システムキッチン、木製建具と続くのでしょうが、後はなかなか思い浮かばない人も多いと思います。しかし現在では、柱や梁などの構造躯体もプレカット工場で加工されており、現場では組み立てるだけとなっています。その他ではまだ普及しているとは言えませんが、基礎の鉄筋にもプレ鉄筋と言うものがあり、基礎の形状・配筋図から事前に工場で幾つかのパーツに分けて組み、現場でセットするものがあります。また、コンクリートで整形した基礎のパーツを現場でボルト接合などで組み立てるものまであります。さらには、設計図から配線計画を立て、ケーブルを所定の長さで切断・回路結線接続などの加工を行ったユニット配線もあります。ケーブルには、配線先の名称が示されており誤配線防止とメンテナンス対応に優れています。

では、どこまでプレハブ化が進むのでしょうか。おそらく、外壁のプレハブ化は可能でしょう。既に、外壁下地に断熱材を取付けたものを採用している住宅会社もあります。また、床下地板、野地板までをプレカットしているところもあります。つまり、現在の在来木造住宅は、個人ユーザーがDIYで使う道具の範囲で、ほとんど出来上がるようになっているのです。

プレハブ化する上で必要となるのは精度です。組み立てる部品点数が増えれば増えるほど、その精度が問題となります。先に挙げたプレハブ化された部品は、それらを納める空間や寸法の精度が上がったことから可能となったのです。余談になりますが、1mの部材を1/10にカットしたものは当然ながら10cmの長さにはなりません。カットする時に損失が出るからです。では、10cmの長さの部材を10個繋げたら、1mになるか。理屈では1mになるはずですが、実際には1mを超えます。これは部材の接合面に目に見えないほどの凹凸があるからです。木材加工の世界で知りうる限りでは、家具職人の精度が最高です。彼らは、通常の計測では10cmにしか見えない部材を10個繋げて1mの長さにする技術を持っています。勿論、電子ノギスなどで測れば、各部材の長さは10cm未満になっています。しかし目視計測のノギスでは10cmとしか読み取れないのです。

この家具職人ほどの精度ではありませんが、構造躯体のプレカット工場での機械や刃物の設定精度は0.1mm単位です。そして、この機械や刃物で加工される部材の精度は1mm以下になります。百を超える部材からなる構造躯体を正しく組み上げるには、これくらいの精度が必要なのです。なお、これらの部材で組み上がった構造躯体の精度はmm単位となります。建築CADの革新とプレカット加工技術の向上が住宅の精度を上げ、部材・部品のプレハブ化を促進したと言えます。

プレハブ化の目的には、省資源と省力化、そして品質・性能の確保があります。特に、在来木造住宅では構造躯体の施工の均一化、そして設計段階での品質・性能をそのままに施工に反映できる大きなメリットがあります。職人の技能差から出る構造躯体の品質・性能のバラツキは在来木造住宅の信頼を損なうのです。

在来木造住宅のプレハブ化が進んだ現在では、大手ハウスメーカーも工務店も、使用する部材や部品の品質・性能に差はありません。従って、より住宅の品質を上げるためには設計監理や現場管理が今まで以上に重要な役割になってくるのです。ジグソーパズルゲームのように、最後のピースが正しく納まるかどうかは、精度の高い部材や部品を如何に正しく設計・施工するかによるのです。

質問 Jun 11, 2016 公開 提案 事務局 (7,800 ポイント)

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